人によって成長スピードは違う。
それは生まれもった才能みたいなもので、何でもすぐに吸収して、さほど手をかけなくても自発的にグングン成長する人がいる。
一方で、どんなに指導しても、なかなか成長しない人もいる。
なんとなく個人的に好きなタイプは、指導したら指導した分だけそれを吸収し、その中から自らも多少のアレンジを加えながら、健康的に成長していくタイプ。
教えた分の少しだけ上の結果を出してくれるのがちょうど良い。
うちのオフィスにはいくつかの植物がある。
その中で一番成長スピードが早い「クワズイモ」について。
「クワズイモ」とは、大好きなウィキペディアによるとサトイモ化の一種のようだ。
見た目はサトイモに似ているものの、食べられないから「クワズイモ」と呼ばれている。
またこれを書くにあたって知ったが「毒草」に分類されているらしい。
オフィスにある「クワズイモ」もよく粘り気の強い汁をダラダラと垂らしているが、どうやらこれ自体も刺激が強く危険なようだ。
しかし、この「クワズイモ」というのが良く成長する。
水を与えたら与えた分だけ、光を向けると向けた分だけ成長をしてくれる。
1年半前に購入したものだが、既に倍近いサイズに成長した。
見た目は根っこのいわゆる幹の部分が非常に硬く、そこからなんとも繊細な長い緑の茎が出ていて、その先に立派な葉が生える。本当に立派な雨もしのげそうな巨大な葉が生える。
気になるのは、この根元の太い幹はなんなんだという事。
元々は「小さな種」から育ったはずの「クワズイモ」。
上の方は青々とした繊細な緑の茎が咲くのに根元は実にたくましい。
この繊細な茎と葉を咲かす植物はどのタイミングで硬く丈夫な幹を作っているのか・・・?
この説明は大好きなウィキペディアにはされていないが、1年半もの間、超ハイペースな成長ぶりを見てるとこの植物のたくましく成長する姿にその答えを見つける事ができる。
そして、それを見る度「我々も負けてられない」と思わされる。
大きく青々と伸びる細い茎は自分の持てる最大限の力で、自ら耐えられる限界の大きさの葉を広げる。この葉からは太陽光を吸収し、自然界では水分も吸収する。(うちのオフィスではいずれも乏しいのが可愛そうなのだが・・・)
そして、その茎が自分の咲かせた葉の重さに耐えられなくなると、
「・・・もう僕は限界だよ・・・」
「ちょっと悪いけど後は頼んだよ・・・」
・・・とばかりに萎れてくる。
っと、ここまでは良くある話しなんだが、「クワズイモ」の茎はここからが凄い。
自分の限界まで咲かせた葉から栄養を十分に吸収させ、ギリギリまで支えていた茎は最後の力を振り絞って葉を支えようとするけど、その終わりは次第に訪れる。
そう、それは私がカッターを持って「クワズイモ」の茎を切る時だ。
これ以上萎れると、見た目的に悪い。
これ以上萎れると、運気が悪く見える。
これ以上萎れると、小さなオフィス内で通行の邪魔になる。
こう判断した日に私はカッターを持って「クワズイモ」の茎にさよならを言う。
・・・「ゴメンにょ」
いや、もっとしっかりと念ずる ・・・「本当にゴメンなんだにょ!」
茎は根元から切られ、水々しいしぶきが溢れる。
それを見るとまだまだ現役として活躍できたと思わせるほど水々しい。
そこから数日そして数週間が経過するとこの切られた茎はまるで切られるのを待っていたかのように次のフェーズにと移る。
そう、この切られた茎は、次第に枯れた色になり、そして根元の幹と一体化をはじめる。
あのゴン太な、まさに芋っぽい、そして根っこっぽいあの幹の一部へとなって次に生えてくる幹を優しく下支えしてくれるのだ。
自らの身を犠牲にして成長し、次の成長の下支えした緑の茎が、自分の役割の終焉とともに次の世代を支える太い幹と化す。
あの太い幹の塊も、何年も前は綺麗な葉を支える茎だった事を知ると切なくもあり力強くも感じる。
うちのオフィスでは、だいたい3週間の1回のペースで「カッター」の儀式が行われるが、この儀式の度に、すくすくと育つ「クワズイモ」の底知れぬパワーを目の当たりにし、カッターを手に思う。
「我々も・・・もっと強く、もっと早く・・・
もっともっと成長するんだにょーー」
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